ダリこっぺの「この街で働く人の小さな哲学」
武蔵小金井駅北口、小さなビルの二階にその整骨院はある。
少し気を抜くと通り過ぎてしまいそうな場所だが、
扉を開けると、優しい空間が広がっている。
社長はもともと、球団オーナーになりたかったという。
誰かの才能や努力を、裏側から支える側になりたかったからだ。
始まりは大学生時代の整骨院でのアルバイト。そのまま業界の道に入った。
開業は、計画的だったわけではない。
以前の職場で、給与を上げてもらいたいと相談したが認めてもらえなかっ
た。
それならば自分が理想の院を作ろうと、気づけば独立していた。
人を雇わなければ、自分はサボってしまうと思い、すぐにスタッフを雇っ
た。
手弁当で始めた整骨院の資金はすぐに底をつきそうになった。それでも不
思議なことに、口コミで患者が増え、気づけばスタッフも増えていった。
「ピンピンころりを助けたいんです」そう言って、社長は笑う。
元気に生きて、最後はすっと逝く。
乱暴に聞こえるこの言葉の裏には、実はとても誠実な願いがある。
誰しも体の不調に気づかないまま、無理を重ねてしまうことがある。整骨
院は、その小さなズレに気づく仕事でもある。
カルテを書きながら、目の前の患者を理解していく。
自分の体に向き合ってくれる先生がいる。
それだけで、人は健康に近づく。
身体の専門家としてこの仕事の価値をもっと伝えたい。
スタッフが家族を養える仕事にしたい。
それが、この院のもう一つの目標だ。
整えられた体は、また明日に向かって動き出す。
元気に生きて、最後はあっさりと。
その当たり前の願いを支えるのは、この仕事なのかもしれない。
2026年5月10日(日)発行 小金井新聞より転載
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